税務研修室
− Tax Seminor −

税理士 鷹野 保雄

『相続税 基礎の基礎-6』
遺言の基礎

どんな場合に遺言をするといいの?
 現在の相続制度においては、遺言によらなければ、自分の思いどおりに財産を受け継がせることができません。長男に会社を継がせたい、病気の妻に住む家と一定の現金は残してやりたい、献身的な介護をしてくれた次男の妻に財産を残してやりたい、というような場合には遺言をする必要があります。

遺言と法定相続分
 一般的には相続が開始すると、民法の定める法定相続分に従って、財産が分配されると思っておられる方が多いようです。しかし、民法で定めている法定相続の制度は、遺言による被相続人の意思表示がないときのための補助的な制度にすぎません。ですから、遺言を残しておけば自分の財産を、死後においても自由に処分できるのです。
 ただし、前回お話したとおり、民法には遺留分制度がありますので、相続人による遺留分減殺請求が裁判所に提出されることにより、一定割合の相続分が遺言の内容に反し、相続人に帰属することもありますので、注意が必要です。
 また遺言は、死後に効力が生じるということから、遺言者の意思が正しく伝えられるよう、民法において一定の方式を定めています。

遺言の種類
遺言の種類には、いくつかのバリエーションがありますが、まず大きく分けて「特別方式」と「普通方式」があります。
 特別方式は、遭難中の船の中や、伝染病などで隔離されている場合など、かなり特殊なケースですので、ここでは「普通方式」の遺言に絞って説明します。
 普通方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類の方式が定められています。
  @自筆証書遺言
    遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を自分で書き、捺印することによって成立す
   る遺言の方法です。
    ですからワープロで作成したものや、人に書いてもらったものは法律上、無効とな
   ります。
    また、法律の専門家が作成に関与することを要件としないため、法的に必要な内
   容が欠けていたりして、無効になる恐れがありますし、最初の発見者が隠匿したり、
   内容を無断で変更する恐れもあります。そのうえ、遺言書の保管者や発見者は、家
   庭裁判所の検認手続きを受けなければならず、手続きが面倒であるというデメリット
   があります。
  A公正証書遺言
    2人以上の証人に立ち会ってもらって、遺言者が公証人に遺言の趣旨を説明し、
   公証人が遺言の趣旨を筆記した後、これを読み聞かせ、遺言者、証人、公証人が
   それぞれ署名・捺印することによって成立する遺言の方法です。この場合、裁判所
   による検認が必要なく、法律の専門家である公証人が内容もチェックできるので、
   遺言自体が無効になる心配がありません。遺言者の意思を正しく伝えるためには一
   番お勧めできる方法ですが、遺言の内容が事前に漏れてしまう恐れがあります。 
  B秘密証書遺言
    遺言者あるいは第三者が作成した遺言書に、遺言者が署名・捺印した後に封筒
   に入れ、証人2人の立会いのうえ、公証人にも立会人にも遺言の内容を公開せず、
   公証人が封筒に署名・捺印して封印することによって成立する遺言の方法です。こ
   の場合も、自筆証書遺言同様、裁判所による検認の手続きを受けなければなりま
   せん。

遺言の執行
 遺言は、執行によってはじめてその内容が実現されるので、信頼できる専門家を遺言書において遺言執行人に指定することも重要なことです。
遺言を残さなかったばかりに、相続人の間で紛争が起こるケースはよくあることです。自分がこれまで作り上げてきた財産を守るためにも、相続人が、その後も仲良く暮らしていくためにも、遺言書の作成は必要なことでしょう。

=なお、上記の内容は2000/10/1現在の税法などに基づいて記述しています。=

『ほほえみだより2000年10月号掲載』