税務研修室
− Tax Seminor −

税理士 鷹野 保雄

『相続税 基礎の基礎-8』
円満な分割を行うには

真の相続対策における円満な分割
 前回では、真の相続対策について、3つのキーワード(争族対策・相続税対策・事業承継対策)を掲げ、その必要性をみてきましたが、今回はその中でも最も重要なキーワードである、円満な分割「争族対策」について考えていくことにしましょう。
 前回もお話したとおり、真の相続対策とは、残されたご家族が力を合わせ助け合い、未来永劫仲良く暮らしていけるものでなければ意味がありません。相続発生により肉親同士がいがみ合い、憎しみあうことがあってはならないのです。

円満な分割ができないとき
 また、相続税法においても、遺産分割が調わないまま申告期限を迎えることになりますと、非常に不利です。

「配偶者の税額軽減」を受けることができない
 たとえば、No.Cでも説明しました相続税の税額控除のうちの、「配偶者控除」を受けることができなくなります。配偶者控除は、配偶者が相続する財産が、法定相続分以下又は1億6000万円以下の評価額であれば、この配偶者には相続税はかからない、というありがたい規定です。ところが、遺産分割が調っていないと、配偶者も他の相続人と同様、相続税額を計算して納税しなければなりません。
 また、配偶者控除は、真の相続対策における2番目のキーワードである「無理のない納税」を考える上でも、非常に重要な要素ですので、さらに不利といえましょう。

「小規模宅地の評価減特例」を利用できない
 被相続人の自宅や事業に利用していた土地については、最大8割の評価減ができることになっている大変ありがたい規定です。これも、未分割のままでは利用することができません。また、配偶者控除と同様、「無理のない納税」のためにも是非利用したい規定です。

「物納」ができない
 共有財産の持分だけを物納することはできません。また物納の申請は、相続税の申告期限までに必ずしなければならないのです。
したがって、分割協議が調わないまま、この物納申請期限をやり過ごしてしまっては、あとになって「物納しか納税の手はなかった」と思っても、取り返しがつきません。物納の撤回等はあとからでもできることなので、いったん共有者全員で物納申請をしておくことが必要です。
 以上のように、いがみあったまま申告期限までに遺産を分割できていない場合には、経済的にも大変大きなマイナスになるのです。

「遺言書」の重要性
 これらを回避するには、No.Eでお話ししました「遺言書」を準備することが、大変重要になってきます。争族を避ける心配りをもった「遺言書」の作成が必要なのです。また、代償分割も有効な手段でしょう。
 次回はこれらの事項について、具体的な事例をあげ、検討していくことにしましょう。

=なお、上記の内容は2000/12/1現在の税法などに基づいて記述しています。=

『ほほえみだより2000年12月号掲載』