税務研修室
− Tax Seminor −

税理士 鷹野 保雄

『相続税 基礎の基礎-10』
 自社株の相続と必要資金を考えた分割

分割の基本的な考え方
 前回お話したとおり、円満な分割にあたっての基本は、
   @住む人が家を相続する。経営する人が自社株を相続する。
   A必要資金まで考えて分割する。
 の2点です。
 今回はこれらのうち、「自社株の相続」と「必要資金を考えた分割」について、考えていくことにしましょう。

自社株の相続
 自社株については、「支配・経営」に関する心配りが欠けてしまっている分割をよくお見受けします。自社株は自宅と違って1株単位で分けやすいことから、分けにくい不動産を分割したあと、平等な財産額にするための埋め合わせに、あるいは単純に相続人の頭割りなどで分けてしまっているケースが多いのです。

経営・相続対策上の問題
 ところが、このような容易な分割をしていると、実際にその後自社経営を長らく続けていく中では、議決権の不足から、経営上いろいろな問題が生じてしまいます。
 例えば、成長が著しい新規事業にさらに力を入れるため、旧事業の既存設備である工場を売却したいと考えても、議決権の3分の2以上の賛成が得られず、計画が実行できない・・・というケースです。
 また、資産対策には、「増資」「減資」「合併」「分社」などさまざまな「資本等取引」といわれる手法がありますが、これらについても、議決権の3分の2を満たさなければ株価対策・事業継承対策として実行することができません。

経営する人が自社株を相続する
 これらの例のように、会社の重要な問題を決定するには、特別決議のできる3分の2以上の議決権が不可欠です。後々、問題を残さないために、遺言書を作成されるのであれば「誰が相続するのが一番自然か」を念頭に置いて分配してみてください。
 そのうえで、不公平が生じるようであれば、代償分割を積極的に活用すればよいのです。これに必要な現金は、生命共済などを活用し、確保してあげればよいでしょう。

必要資金を考えた分割
 この代償分割を使った分割が、まさに必要資金を考えた分割といえます。代償分割とは、例えば5の財産を相続する予定の相続人が、7の財産を相続する代わりに2の金銭等を他の相続人に支払う方法をいいます。 自宅などの売却できない財産だけが相続財産である場合や、今回のような議決権の確保を考えたときにはぴったりの方法です。ただし、問題は、この2にあたる金銭の調達です。
 そこで、遺言等を残すときには、その納税資金はもちろんのこと、代償財産とするための資金調達にまで心を配った内容のものでなければなりません。生命共済に加入するなど、資金の確保が重要なのです。

=なお、上記の内容は2001/2/1現在の税法などに基づいて記述しています。=

『ほほえみだより2001年2月号掲載』