税務研修室
− Tax Seminor −

税理士 鷹野 保雄

『税務Q&A 具体的な相続税対策-5』
抵当権つきの不動産を相続するときは?

 今回も、前回に引き続き、組合員の方から寄せられた質問について、みなさんにご紹介したいと思います。

“ご質問”
 先日父が亡くなりました。相続財産は、自宅の土地建物の他には、ほとんどみるべきものはありません。しかもよく調べてみたところ、その土地建物に抵当権がついていることがわかりました。遺産の分割については、私が長男なのでこの土地建物を相続しようと考えておりますが、この抵当権についてどう考え、どのように対処すればよいのでしょうか。

“ご回答”
 抵当権については2つの場合に分けて考えなければなりません。
 第1は、亡くなった父親が、単に第三者の債務担保のため、土地建物を提供して抵当権を設定させた場合、すなわち物上保証の場合です。
 第2は、父親が借金をして、その債務の担保のために、土地建物を抵当権を設定した場合です。この区別は、土地建物の登記簿謄本を取って、乙区欄を見ていただくと、そこに債務者名がでていますので、確認することが出来ます。

物上保証は債務履行の有無がポイント!
 第1の物上保証の場合は、保証債務の履行の有無がはっきりしているケースと、していなケースに分けて考える必要があります。
 @債務者に資力があり保証債務が履行されることがないケースは、通常どおり相続してもまず問題はないでしょう。
 A逆に、債務者が資力を喪失し弁済することが不能な場合には、一定の要件のもとに、この履行されるであろう保証債務は、相続税法上の債務として控除することが出来ますので、その分相続税が安くなります。この場合、最悪のケースでは、土地建物が競売にかけられますが、それ以上の返済は求められませんので、@同様、そのまま相続しても問題ないでしょう。
 注意すべきは、物上保証が履行されそうだが、相続税の債務としては認められないケースです。この場合には、相続した後に保証債務が履行されてしまうようなことがありますと、相続税を払ったのに、その土地建物も失ってしまうというようなことにもなりかねません。このようなケースでは他に相続するような財産がないのであれば「相続の放棄」をするのも、ひとつの方法です。

債務の担保としての抵当権には注意!
 第2のケースでも、そのまま父親の地位を相続で承継すると危険な場合があります。不動産としての資産価値が下がっている現在では、不動産で担保しきれない借金についても、支払わなければならなくなってしまうケースがあるからです。
 そのときは、裁判所に申し出て、「相続の放棄」あるいは、「限定承認」をするのも一つの方法でしょう。なお、これらの手続きは、原則として相続開始を知ってから3ヶ月以内にしなければなりませんので注意が必要です。「限定承認」は、借金を差し引いても財産がプラスの場合で、その借入金について返済することが可能であれば、そのまま不動産を相続し、借入金については返済していくことになります。

根抵当権は迅速な手続きが必要!
 最後に、その不動産についている抵当権が、根抵当権である場合には注意が必要です。根抵当権は相続開始後6ヶ月以内に登記を済ませなければ、相続開始後に生じた債務については担保されないことになっています。こうなってしまいますと、根抵当の枠があっても、新たな借入については更に担保を提供しなければならなくなりますので、新規借入は十分注意が必要です。

=なお、上記の内容は2001/10/1現在の税法などに基づいて記述しています。=

『ほほえみだより20001年10月号掲載』