税務研修室
− Tax Seminor −

税理士 鷹野 保雄

『税務Q&A 具体的な相続対策-7』
分割のしかた・納税のしかた

 今回も前回に引き続き、組合員の方から寄せられた質問について、みなさんにご紹介したいと思います。

“ご質問”
 先日母が亡くなりました。父はすでに他界しており、相続人は私と兄のふたりです。母は兄と同居しており、父の相続時には、ほとんどの財産を兄が相続したので、母の財産は父から引き継いだ土地350坪のみです。ただこの土地は道路付けがよいこともあり、かなりの評価になるようです。
 私の夫がその内の60坪に自宅を建て、家族で暮らしています。今回の相続で、私はこの60坪の自宅用地を取得する予定ですが、現金がないため相続税を納めることができません。そのお金を夫に出してもらうと、贈与税の問題も出てきてしまうということで、悩んでいます。何かよい納税方法はありませんでしょうか?

“ご回答”
 物納や代償分割を上手に利用することにより、手元現金を支出することなく、相続税を納めることも可能です。

居住用も更地で評価
 相続税には、お亡くなりになった方が住んでいた土地の内、一定部分については、評価額を50%から80%も減額してくれる、「小規模宅地の評価減」という規定がありますが、今回のように、お亡くなりになった方と生計が異なる相続人が住んでいる土地については、基本的に適用することができません。ですから自宅用地のみの取得でも多額の相続税が発生してしまうことがあるのです。

分割方法を考える
 このような場合には、もう一度分割のしかたから考え直すことが必要です。あなたのお兄様は、前回のお父様の相続のときに十分な財産を引き継いでいるようですので、今回はお兄様にも協力していただけるよう、よく話し合いましょう。とはいえ、税金をお兄様に代わりに支払ってもらっては、贈与税の問題が出てきてしまいますので、以下の方法が考えられます。

@代償分割を利用する
 お兄様に十分な資金がある場合には、あなたの税金が払えるよう、代償分割として金銭をお兄様からいただくのです。お兄様はあなたよりも広い290坪の土地を相続するわけですから、その代わりにあなたが遺産分割の一部として金銭をお兄様から取得すれば、贈与の問題はでてきません。

A物納を上手に利用する
 もうひとつの方法は、物納を上手に利用することです。
 お兄様にも十分な納税資金がない場合には、ふたりの相続税に見合う税額分の土地を共有名義にし、物納により相続税を納めるのです。
 例えば、兄妹2人分の相続税に見合う土地が40坪だとします。あなたは60坪の土地を取得するわけですから、残りの250坪をお兄様が相続し、この40坪分を共有名義にするのです。そしてこの40坪を物納にあてれば、金銭を支出することなく相続税を納付することができるのです。
 ただし、物納にはいろいろ要件があるので注意しなければなりません。『境界が明確でない土地で、隣接地主から境界線に異議のない旨の了解が得られない土地』、『隣の建物の一部が境界線を越境している土地』、『無道路地』などは収納してもらえません。
 幸いあなたの土地は道路付けも良いということですので、境界線を明確にすれば問題はないと思われます。納税の問題は、このように分割のしかたひとつで、大きく変わります。末永く兄妹仲よく暮らしていくためにも、じっくりご家族で話し合いたいものです。

=なお、上記の内容は2001/12/1現在の税法などに基づいて記述しています。=

『ほほえみだより20001年12月号掲載』