税務研修室
− Tax Seminor −

税理士 西村 敦正

『税務調査を考える』
相続税の税務調査に備えて〜その2〜
調整区域の現況には注意!

 前回は、相続税の税務調査の現状についてお話しました。今回は、この厳しい調査に備えるための対処方法についてお話ししたいと思います。

税務調査に備えるために
 相続税の申告は、生まれたときから亡くなるまでに貯蓄された財産すべてについて課税していこうという、まさに人生の総精算として課税される税金です。所得税のように毎年の税金ではないため、税務署もそう簡単には見逃してくれません。このようなきびしい調査に備えるためには相続発生時から綿密な準備が必要なのです。

土地建物について
 前回もお話しましたが、相続財産に占める土地建物の割合は65%と、地価がこれだけ下がっている現在においても非常に高くなっています。また土地は、評価単価も高額なため、税務署に評価額に問題があると指摘された場合には税金が何百万、何千万円も増えてしまう!などということのないとはいえません。このようなことがないよう、評価には細心の注意が必要です。それでは、税務署は土地の評価についてまず何をチェックしてくるのでしょうか・・・

調整区域の現況には注意!
 税務署が土地を調べる場合には、まず利用単位ごとの評価が適正にされているか!をチェックします。特に注意しなければならないのが調整区域の「畑」「田」や「雑種地」の評価です。以下の事例で確認してみましょう。
実際の事例
 私は同一調整区域に2筆「畑」(それぞれ1反)を所有しています。1筆は実際に野菜を栽培し、もう1筆は今年から栽培をやめ最近では雑草が生えています。評価証明は両方とも現況地目が「畑」になっていますが、相続評価はいくらになるのでしょうか?

〔栽培している畑の相続税評価額〕
固定資産税評価額 × 畑の倍率(柏市のある地域)
 72,044円    ×  110倍  = 7,924,840円

〔荒地の畑の相続税評価額〕
固定資産税評価額(宅地比準) × 宅地の倍率
 44,709,634円       ×  1.1倍 = 49,180,597円

 いかがでしょうか?同じ面積の畑でも、現況により評価がこれだけ違ってしまうのです!もし申告のとき両畑とも「畑の倍率」を使って評価し、税務調査のときに一方が荒地であることがわかってしまったら・・・評価額が4千万円以上、相続税率が20%としても約1千万円の追徴税額が課税されてしまうのです!

対処方法
 今回のケースは、「畑」が「雑種地」として認定されてしまうため、このような評価差がでてしまうのです。もし栽培していないにしても、いつでも栽培できるような状態(うなってある状態)を少なくとも、相続発生から調査が行われるまで(通常は申告書提出からおよそ3年間くらい)は維持しておく必要があるでしょう。
 また、「畑」を駐車場などに転用する場合にも当然このような評価の増額が見込まれます。転用する場合には、この評価の増額に見合うだけの十分な収入が確保されるのかを検討することが大切です。
 調整区域の土地の評価は、固定資産税評価額に倍率を掛けるだけで算出されてしまうため、つい書類上の計算で見てしまいがちです。上の事例のように、利用状況により何倍にも税額が変わってしまうので、慎重な判断が必要なのです。

=なお、上記の内容は2004/6/1現在の税法などに基づいて記述しています。=

『ほほえみだより2004年6月号掲載』