税務研修室
− Tax Seminor −

税理士 西村 敦正

『税務調査を考える』
相続税の税務調査に備えて〜その3〜
預貯金の流れをつかむ!

 前回は、相続税の税務調査におけるとりわけ、調整区域の土地についての注意事項をお話ししました。
 今回は、税務調査のメイン事項である、現金・預貯金についてお話したいと思います。
税務調査に備えるために
 
右の図は前々会お話しました税務調査における申告漏れ財産の内訳です。見ていただくとわかるとおり、税務調査による申告漏れの約4割が現預貯金ということになります。もともとの財産に占める割合が16%しかない現預貯金から4割もの申告漏れが指摘されているわけですから、いかに税務署も現預貯金の調査に力を入れているかがお分かりいただけると思います。

税務署はここを見る!
 税務署は調査の際には、特に以下の点を重点的にチェックします。

相続発生直前の預貯金の動きをチェック
 相続が発生した場合には、その後の病院への支払いや葬儀費用など、多額のお金が必要になります。相続発生後では金融機関が口座を凍結してしまい、お金を下ろせなくなってしまう場合が多いため、生前にまとまったお金を下ろす必要がでてくるのです。この直前に口座から下ろされた現金を税務署はちゃんと申告しているか、確認するのです。

現金の計上が重要!
 相続税の申告は、亡くなった日現在の預貯金の残高に基づき計算するので、直前であれ、下ろしてしまった金額は金融機関の残高証明には出てきません。そのため、この分を現金にプラス計上しなければ申告漏れになってしまいます。葬儀に備えるために下ろしたお金であっても、亡くなった時点では、まだ業者などに支払っていないわけですから、手元に現金としてあったと考え、相続財産に現金として計上する必要があるのです。そのかわり、その後支払った葬儀費用については債務としてマイナスすることができるわけです。

金融機関に直接確認することもある
 
税務署はこの下ろされた現金をきちんと把握するためにも、金融機関に相続発生から遡った取引紹介を行い預貯金の動きを把握します。また、所得税の確定申告による毎年の所得のわりには、あまりにも預貯金の残高が少ないと判断された方については、直接金融機関に調査に入り、家族名義の預貯金を含め、すべての移動状況について調べるのです。ですから、皆さんの所に調査に来るときには、もうすべての預貯金について把握しているというケースも実際にあるのです・・・

直前の資金移動は注意!
 税務署の現金・預貯金に対する調査は、金融機関に対してさえ厳しく行なわれますし、皆さんに対する税務調査の際には、調査官にもよりますが、「家族全員の通帳を見せて下さい!」などと相続人でない子供達の通帳まで調べられることさえあります。
 このような厳しい調査を乗り切るためにも、普段から資金の移動には細心の注意を払う必要があります。
 今回は、直前の資金移動に絞りお話しをしましたが、この現預貯金の取り扱いについては、この他にも注意をしなければならないことが沢山あります。次回以降お話ししていきましょう。

『ほほえみだより2004年7月号に掲載』