税務研修室
− Tax Seminor −

税理士 西村 敦正

『税務調査を考える』
相続税の税務調査に備えて〜その5〜
「預貯金について・事例Q&A」

前回は預貯金について、特に家族名義の預貯金の取り扱いについてお話しをしましたが、皆様方からいくつかのご質問をいただきましたので、今回はその質問について、Q&A方式でお話しさせていただきます。

十年以上前の名義預金について
 私は十二年ほど前、共済が満期になったので、その満期金で息子名義の定期貯金を1千万円、孫2人の名義の定期貯金各5百万円、合計2千万円積み立てました。その当時、定期の証書は息子や孫へは渡しておらず、現在も私が管理しております。また、贈与税の申告も提出しておりません。
 しかし、贈与税には時効があると聞いております。十二年も前に名義を変えたものであれば、時効が成立し、贈与税は支払う必要がないと考えておりますが、それでよろしいのでしょうか?また、私に万が一の時も、私名義の定期ではないので、相続税の対象にもならないと考えておりますが、いかがでしょうか?

A 預貯金の名義が、ご本人以外のものでも、確固たる贈与の事実が証明できない限り、本人の財産として相続税が課税されます。この場合、そもそも贈与が成立しないため、時効の問題も発生せず、例え十二年以上前に名義を変更していても、相続税が課税されてしまいます。 

名義変更が税務署にわかるのは相続の時
 まず皆様に、よく理解していただきたいのが、名義変更はいつ税務署にわかってしまうのか?という点です。当然、税務署は常に皆様の貯金をチェックして「はい!昨日、贈与しましたね!贈与税払ってください。」とは言ってきません。お金の稼動状況は、相続税の調査において初めてチェックされるわけです。
そうなると、今回のような贈与税の時効を主張するためには、将来の相続発生時に、「十二年前の贈与」の事実を証明する必要がでてきます。

贈与税の申告が提出されているか?
 贈与の証明に一番いいのが、その時ちゃんと贈与税の申告をしていることです。(当たりまえですね)しかし、今回は申告していません。

確定日付入りの契約書が作られているのか?
次にチェックされるのが、贈与の事実です。例えば贈与契約書が当時作成されていたか?(公証役場の確定日付入りの契約書)が問われてきます。確定日付は日付を遡ってつくることができないため、税務署も信用します。これも今回はありません。

もらった人が管理しているか?
 こうなると、公的な書類では説明できないため、実質を税務署に理解してもらう他ありません。この定期は当時ちゃんと子供に渡し、子供が管理している事実を説明するわけです。十二年前からその金額のまま、ただ書換えをして現在に至っているというのでは、税務署もなかなか贈与の事実は認めないでしょう。よほどの高額所得者でなければ、通常十二年以上も定期を書き換えていれば、途中で何か購入したり、金額が変動しているはずですから。

もう一度、贈与をやり直すことが確実
 
今回のケースでは、将来の相続に備え、もう一度贈与をやり直すことが確実な方法です。名義預金はもともと本人の財産ですから、本人に名義を戻しても贈与税は発生しません。今年から計画的に、贈与税の負担が少ないよう年度を分けて実行するのです。
 こうすれば将来、相続税も課税されず安心です。

『ほほえみだより2004年10月号に掲載』