税務研修室
− Tax Seminor −

税理士 和田 造

『航空機リース事業を考える』
減価償却費は損益通算できるか?
ー 津地裁判決のポイントをつかむ! ー

前月号に引き続き税務訴訟(裁判)の話題ですが、また納税者を支持する地裁判決が出ました。

事実関係は?
 
個人実業家を募った民法上の組合が、組合の航空機リース事業から生じた収益の分配をリース料収入として不動産所得に計上し、これを上回る減価償却費等を計上したことにより発生した不動産所得の損失の金額を投資家に配分し、それを投資家が他の個人所得と損益通算して確定申告を行った「節税」の可否を巡って争われた裁判です。
 訴訟になった投資契約は、個人投資家から募った出資金と金融機関からの借入金により航空機を1機購入したものです。組合は、その航空機を航空会社にリースして、そのリース料収入を金融機関からの借入金の元本・利子の返済に充て、航空機本体の減価償却費等から生じる組合の損失を組合員である投資家に分配します。
(下図)投資家は、それを他の個人所得と損益通算して、節税を行う訳です。そして、リース期間終了後にその航空機を売却して売却代金を金融機関の借入金残高の返済に充て、その残余分を投資した組合員に分配することによって利益が出る仕組みになっています。

レバレッジド・リースの仕組み


裁判の争点は?
 この裁判で争われた主な点は次の三つです。@事業内容に経済的合理性があるか否かA組合契約内容が組合の実態を有した民法上の契約であるか否かB組合契約が匿名組合あるいは民法上の組合契約と認められるとしても、事業に係る収益は利益配当契約として雑所得にあたるか否か。

津地裁判決の要旨は?
 第一審の三重県の津地裁は、税務当局の行った更正処分を取り消して納税者を支持する判決を出しました。上記の争点に関して、裁判所は@について税法上のメリットを考慮してその選択を行うことは不等ではないAについて民法上の組合契約の成立要件(検査権・解任権・利害関係)を満たしているBについてこのリース事業収益が不動産所得に区分されていると判断を下し、納税者の主張を認めました。

名古屋地裁判決の要旨は?
 
昨年の10月に隣の名古屋地裁も同様に納税者の主張を支持する判決を出しました(主たる判断根拠は憲法84条の租税法律主義でした。)

新判決の影響は?
 この二つの地裁判決によって航空機リース事件は決着(終審)がついた訳ではありません。国側は、これを不服として名古屋高裁に控訴しました。 

税制改正の要旨は?
 この二つの地裁判決を考慮して、早速平成17年度の税制改正では、航空機リースに代表される「レバレッジド・リース(匿名組合契約)」に対して税務上の規制措置が行われました。リース会社と投資家の民法組合契約が高額な航空機や船舶等を購入してリース事業を展開する場合、改正では民法組合事業等から生じた個人組合員に帰属する不動産所得の損失が無かったものと見なされます。従って、今回の訴訟と同様の仕組みを利用して、組合による航空機等の高額リース事業から生じる減価償却費等を、組合員の課税上の損失に計上して節税を図ることが出来ない仕組みになってしまったのです。なお、耐用年数や減価償却方法の改正に留めるべきだったという意見もあります。

今後の税務処理は?
 
上記、平成17年の税制改正では、その適用が、組合員が個人の場合は平成18年分以降の所得税[平成19年の確定申告期)からとされています。また組合員が法人の場合は法人が法人が出資したとされる金額を超える部分の組合損失については損金の額に算入されないことになります。なお、法人の適用はこの4月以降に締結される組合契約からですが、既存の組合の場合は、新規に算入する組合員には直ちに適用されます。

 

『ほほえみだより2005年6月号に掲載』