|
今月は、「国破れて三部(山河)あり」あるいは「藤山(遠山)の金さん」と巷で呼ばれていた(今年4月に異動済み)東京地裁民事三部の名物裁判長(藤山雅行裁判長)が、行政訴訟(被告が税務署長などの国や都道府県・市町村などの地方公共団体である裁判)で下した税務訴訟の一つ(原告勝訴判決)を紹介します。
藤山判決の事例は?
相続税の更正の請求に対する通知処分取消請求
平成14年4月18日判決
事件の概要は?
平成9年9月に死亡したAに係る相続税に関して、平成11年7月に原告XとBがAから送金を受けた現金を相続税の課税価格に算入したのは誤りであった旨、更正の請求をしました。被告Y税務署長は平成11年8月に更正すべき理由が無い旨の通知処分をしました。そこで、原告Xは通知処分の取り消しを求めました。
前提となる事実は?
@原告XとBはAの子です。Bは昭和61年3月に米国国籍を取得して平成3年5月以降は米国に住んでいます。
AAは平成9年2月に日本の銀行から米国の銀行へ1千万円相当のドル為替でB名義の口座へ送金しましたが、AとBの間で現金の贈与契約書は作成しませんでした。
BAは平成9年9月に死亡しました。Aの相続人は原告XとBでした。
C原告XとBは平成10年7月に相続税の申告書をY税務署へ提出しましたが、ドル送金された現金を被相続人Aからの贈与による取得であると考えて、相続税の課税価格に加算しました。
D原告XとBは平成11年7月に被告Y税務署長に対してドル送金現金の加算は誤りであったとして更正の請求をしました。 裁判の争点は?
ドル送金された現金が相続税の課税価格に加算されるか否か?すなわち、送金された現金が生前贈与とされるには、事前に贈与契約が締結されることが必要であり、契約の有無がポイントとなりました。 藤山判決の理由は?
@Bは贈与現金が送金された平成9年2月時点で日本に住んでいなかったので、相続税の納税義務は無かった。
ABに対してAから現金が贈与されたと言えるには、送金以前に贈与契約が成立していなければならない。(ドル口座は国外)
B送金以前に贈与契約の書面は無く、あるとすれば口頭によるものであるが、Y税務署長の立証はされていない。
C従って、BがAから贈与を受けた財産は、取得した時点では日本に所在する財産とは認められず、相続税の課税価格に加算されるべきものでは無い。
D原告XとBの更正の請求には理由があり、更正すべき理由が無いとしたY税務署長の通知処分は違法なもので取り消されるべきである。
※なお、平成12年の税制改正により、日本国籍を有する者が海外に住所を移しての租税回避はできなくなりました。 上級審の判決は?
藤山裁判長は、これまでも行政訴訟で「官」の裁量を限定的に捉えた判断で行政側敗訴を言い渡すことが多かったのですが、それらが上級審で覆されるケースもありました。 他の勝訴判決は?
藤山裁判長の画期的な判決例としては、マンション条例訴訟(東京都国立市の高さ制限条例を巡り市長に4億円の賠償命令)、アフガニスタン人男性訴訟(難民不認定・強制送還処分を巡り東京入国管理局が敗訴)、圏央道土地収用訴訟(東京都あきる野市の建設予定地を巡り国土交通相等が敗訴)、弁護士の夫が税理士の妻に支払った報酬の必要経費算入を巡って税務署長が敗訴した判決などがあります。
|