税務研修室
− Tax Seminor −

税理士 和田 造

『不動産取得税を考える』
転売目的の場合はどうなるか?
ー 地裁判決のポイントをつかむ! ー

 今月は、転売目的で土地を取得した場合にも不動産所得税の課税対象となるか否かが争われた税務訴訟(名古屋地裁)を紹介します。

事件の概要は?
 
原告Xは、土地を売主A社から買い受ける契約を結びました。2ヵ月後にXは、その土地を買主Bへ売り渡す契約を結びました。その2ヵ月後にA社からBへ、その土地の所有権移転登記が為されました(Xに所有権移転登記は経由されなかった)。その10ヶ月後に県税事務所長は、Xに対して不動産所得税の賦課決定を通知しました。これに対して、Xは「第三者の代理人として土地売買契約を締結したものであり、当該不動産を取得してない」と主張して、賦課決定の取り消しを求めて裁判所に訴えました。

裁判の判決は?
 裁判の要旨(解り易くするため一部表現を変えました)は、以下のとおりです。
 『不動産取得税は、課税要件として「不動産の取得」を規定していることから、「流通税」の性格を有している。すなわち、不動産の所有権移転の事実に担税力を見て課税するもので、不動産の取得者が不動産を使用・収益・処分することによって得られる現実の利益に対して課税されるものでは無い。従って、「不動産の取得」とは、不動産の取得者が実質的に完全な内容の所有権を取得するか否かに関係は無く、所有権移転等の形式による不動産の取得の全てを含むものであり、経済的利益に増加等を意図するなど、不動産を取得した動機・目的によって左右されるものでは無いと解される。(最高裁昭和48年判決)土地の所有者Aから原告Xに売却する第一契約と、原告XからBに売却する第二契約が存在しているが、どちらも契約時期を異にしていること、手付け金・残代金・公租公課分担金の各支払いについて別々に領収証が作成されていることから、法的には別個のものと認められる。すなわち、第一の契約について、原告は法的に代理意思を有していたのでは無く、自ら本件土地を一旦買い受けた上で、これをBへ転売しようとしたと認めるのが相当である。従って、原告に対して不動産取得税を賦課した被告の処分は適法である。』(原告敗訴)

捕捉説明

不動産とは?
 
土地と建物のことです。建物を改築した結果、建物の価値が増加した場合も、増加部分が新たな建物の取得と見なされます。

取得とは?
 
所有権移転の形式で、行われる不動産移転の全ての場合を言います。有償か無償か、移転登記が有るか無いかを問いません。

不動産取得税とは?
 「不動産の取得」に対して課される税金です。流通税と言われる種類の税金で、財産の移転という事実を直接・間接に捉えて課せられる税金です。従って、財産の移転に伴って現実の利得が生じる必要はありません。また、不動産の所在地(道府県)において課税される地方税です。

課税標準とは?
 不動産取得税の課税対象金額のことで、不動産を取得した時の適正時価です。具体的には、市町村の固定資産課税台帳に価格が登録されているときは、その登録価格です。また、建物の改築の場合は、その改築により増加した価格となります。

本件判決の捕捉
 第一契約と第二契約は別個の契約であるとする理由は、上述の契約時期や領収書の他にも、第二契約はBのマンション建設資金のために行うXの銀行融資が不成功の場合は不成立となりますが、第一契約は有効であることも理由となりました。なお本件では、A社からBへ直接に所有権移転登記が為されています。これはA社からXへ、更にXからBへの移転登記が無い、いわゆる「中間省略登記」ですが、真実の権利状態に一致している限りは有効とするのが判例です。従って、中間省略登記であっても第一契約と第二契約は別個とされました。

『ほほえみだより2005年12月号に掲載』