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今月は、取引相場の無い株式について、その評価方法が争われた税務訴訟(東京地裁)を紹介します。
事件の概要は?
A社の会長Zは、所有していたA社の株式をA社のB海外代理店の会長X(原告)に譲渡(売買)しました。その際、原告は「配当還元方式」で算出される一株当たりの株価75円を上回る100円で株式を譲り受けました。これに対してY税務署長(被告)は、株式の時価を「配当還元方式」によって算定することは原告が筆頭株主に成るため認められない特別の事情があるとして「類似業種比準方式」によって算定される一株当たりの株価785円で課税(更生)処分を行いました。
地裁の判決は?
先ず、被告であるY税務署長の主張は、次のとおりです。
『@原告Xは当該株式の取得と同時に関連会社の株式も取得しているので個人株主の中で筆頭株主の地位を得てZの後継者の地位を取得したこと、A原告Xが株式の取得資金を金融機関から借り入れた際の保証人にZが為っていることの2点から、ZとXは密接な関係が有り、当該株式の売買がA社の経営に相当の影響力を与えることができるので、原告Xは少数株主と同視できない。またA社は、高率の利益配当を行っている優良企業でありながら、B昨今の低金利情勢から配当還元方式で株価を算定する経済的合理性が無い。従って、当該株式の売買は実質的には贈与に等しい。当該株式を「類似業種比準方式」を用いて高額の価格で売買を行った実例があるにもかかわらず、贈与税の負担を免れるために評価額の低い「配当還元方式」を採用した。』
これらの被告(Y税務署長)の主張に対する地裁判決の要旨は、以下のとおりです。
『@原告XのA社株式の保有割合が7%であり、ZとZの親族の保有割合が48%であること、関連会社株式の保有割合もZとZの親族が上回っていることの2点から、原告XがA社の経営に実効的な影響力を与えうる地位を得たとは認められない。また、A原告Xが金利等のコストの安い日本の銀行から借り入れるために、日本の銀行と取引のある譲渡人Zに便宜上保証人に為って貰ったとの原告Xの説明には格別不合理・不自然な点は無い。実際、借入金の返済は原告X自身が行っている。従って原告Xは、譲渡人Zおよびその親族のような同族株主とは異なる少数株主であり、「配当還元方式」が適応されるべき株主に該当する。B「配当還元方式」による価額の決定は、同族株主以外の株主が取得した株式についての評価方法であり不合理では無く、売買取引が譲渡人側の相続・事業継承対策の一環として行われたということが、「売買取引は実質的に贈与に等しい」「贈与税の負担を免れる意図が存した」ということに直結するものでは無い。また当該株式が他の売買実例で高額取引されている点は、少数事例でもあり客観的な取引価格を算定できるかは疑問である。税務当局の主張を全て考慮しても、本件株式について評価通達に定められた評価方法によらないことが正当と是認されるような特別の事情があるとは言えない。」として、裁判所は被告Y税務署長の贈与税の決定処分を取り消しました。
補足説明
配当還元方式とは?
・同族株主以外の株主等が、取引相場の無い株式を所有することによって受ける利益の配当金額を、一定の利率で還元して元本である株式の価額を求める収益還元方式の一つです。具体的には、対象となる会社の直前期末以前2年間の年平均配当金額を基に、元本の価額に還元すべき利率を10%として計算します。
類似業種比準方式とは?
・取引相場の無い株式のうち、従業員数100人以上の大会社の株式については、この方法で株式の価額を求めます。
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