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今月は、ゴルフクラブを退会する時に、ゴルフ会員権の取得費用が全額回収できないケースの税務訴訟(名古屋地裁)を紹介します。
事件の概要は?
ゴルフクラブの会員であった原告Xが、ゴルフクラブから退会する際に、返還された預託金の価額(入会金)と、ゴルフ会員権の取得価額(会員権+斡旋手数料+名義書換料)との間に損失差額が生じました。原告Xは、その差額を譲渡所得上の損失と判断して、他の所得と損益通算しました。ところが、被告Y税務署長は、この損失を譲渡所得上の損失と認めず、他の所得と損益通算できないため、所得税増額の更正処分と過少申告加算税の賦課決定処分をしました。そこで、原告Xが、この処分の取り消しを求めて裁判を起こしました。
なお、通常のゴルフ会員権の譲渡損は損益通算できます。
裁判の争点は?
先ず、ゴルフ会員権の取得費用と、ゴルフクラブを退会する際に返還された預託金とのマイナス差額が、譲渡所得上の損失に当たるか否か?
原告の主張は、「ゴルフ会員権の性質は、ゴルフ場の優先利用権、預託金返還請求権、会費支払義務を主たる内容とするが、これらは別々に存在するものでは無く、会員たる地位そのものの内容である。これらの権利義務は別々に処分できず、会員たる地位と一体になって運命を共にするものである。原告は、資産としてのゴルフ会員権を取得し、退会により資産の対価を得た際に、ゴルフ会員権が原告からゴルフクラブへ移転したと評価できる。従って、ゴルフ会員権の移転によって、原告に譲渡所得上の損失が生じた。(以上要約)」
被告の主張は、「原告が返還を受けたゴルフ会員権の預託金が譲渡所得と判断されない限り、この損失を他の所得から控除できない。ゴルフ会員権の譲渡は、地位の譲渡であるから、資産の譲渡に該当し、生じた所得は譲渡所得となる。ところが、退会に伴って預託金が返還される場合は、金銭債権としての返還請求権のみを行使したことになる。よって、預託金の返還に伴う損失は所得税の計算上は無視される。(以上要約)」
次に、会員権の取得費用と、返還された預託金とのプラス差額の場合は課税できることと、マイナス差額の場合は損失として控除できずに課税されることとの取扱いの違いが課税公平の原則に反するか否か?
原告の主張は、「預託金の返還を受ける場合、預託金額よりも低額で会員権を取得すれば差益は課税されるが、高額で取得すれば差損は所得から控除されないことになる。同じ資産でありながら、課税上は不当に区別して扱うものなので、公平・公正な課税原則(憲法第14条・84条)に反する。(以上要約)」
被告の主張は、「ゴルフ会員権を預託金額よりも低額で取得し、後に預託金の返還を受けた場合は、雑所得として課税される。反対に、ゴルフ会員権を預託金額よりも高額で取得し、後に預託金の返還を受けた場合は、所得税法上、損失控除を認める規程が無い以上、控除されないことは、やむを得ない。(以上要約)」
地裁の判決は?
先ず、譲渡所得上の損失については、「ゴルフクラブを退会することによって、優先的利用権と会費納入義務が消滅して、無利息預託金の返還請求権のみが残る。そして預託返還請求権を行使することは、金銭債権の行使に他ならないので、譲渡所得の損失には当たらない。(以上要約)」
次に、課税公平の原則については、「金銭債権の譲渡差益は、全て期間利息の性格を有するものには限らない。しかし、預託金の回収が譲渡所得と認められない以上、他の所得と損益通算できないことに変わりは無い。取扱いの不公平云々は、立法裁量に属するもので、所得税法が明らかに憲法に反するとは言えない。(以上要約)」原告敗訴判決
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