− Tax Seminor −

税理士 和田 造

『消費税の税務訴訟を考える』
簡易課税の選択撤回はどうなるか?
ー 地裁判決
のポイントをつかむ! ー

 今月は、社会が錯誤を理由として簡易課税制度の選択届出を撤回嘆願しましたが、税務署から拒否されたので、裁判に訴えた事例を紹介しましょう。

事件の概要は?
 原告であるA株式会社は、主に柔道着の製造問屋業(注文を受けて、原材料を購入し、これを下請け加工させて完成させ、販売先へ納付する)を営んでいました。会社は、消費税について「簡易課税制度選択届出書」を第一種(卸売業)事業区分として一旦は提出しましたが、「法人税基本通達」では第三種(製造業)事業区分とされていることを知り、錯誤による届出書の取下げ願いの「嘆願書」を提出しました。そして、会社は改めて本則課税による確定申告を提出しましたが、被告であるB税務署長は、簡易課税制度を適用して第三種事業区分で本件を処分しました。これを不服としたA社は、名古屋地裁へ「訴え」提起しました。
事件の争点は?
@製造問屋を第三種事業に区分している消費税の基本通達そのものに合理性があるのか?A原告が一旦行った簡易課税選択届出書の提出は錯誤により無効なのか?の2点が争点でした。

裁判所の判断は?
@消費税の簡易課税制度は、中小事業者が複雑な計算をしないで仕入税額を控除できるために設けられたものである。そして、第一種から第五種までの区分は、課税売上高に占める課税仕入金額の割合に顕著な差異が認められる主要な事業類型を実態調査の結果で区分したのである。従って、原告が実額によらない計算方式を選択した以上、事業区分や簡易みなし仕入率の不合理を主張することは出来ない。
A原告は、第三種である製造問屋に該当する事業を、第一種である卸売業と誤信して簡易課税制度の選択適用を届けたのである。そして、その動機は主として節税効果を期待したことは明らかである。また、自由な意思決定のもとに選択したのであって、第三者による詐欺や強迫行為を受けたわけでは無い。従って、原告が主張する錯誤の内容が簡易課税制度の本質に関わるものでも無い。
よって、原告の本訴請求は理由がないから棄却する。(原告敗訴)
裁判結果の教訓は?
 消費税については、本則課税方式で申告するか、簡易課税制度を選択するかは、十分に考えなければならない事項です。目先の節税効果だけで安易に選択するのでは無く、2年間の継続適用の制限や設備計画等を検討の上、慎重に決定する必要があります。

『ほほえみだより2006年6月号に掲載』