− Tax Seminor −

税理士 中嶋 浩三

「相続税 基本中の基本」
相続時精算課税制度 その1

〜 相続税の計算 I 

 前回まで相続税額の計算についてみてきました。今回は、その中で「課税価格」というものの計算上加算するものとして説明をした「相続時精算課税」の制度について説明したいと思います。

【制度の概要】
 贈与税の課税制度には2つあります。「暦年課税」「相続時精算課税」というものです。
 「暦年課税」とは、読んで字のごとく暦年(1月から12月まで)をひとつの期間として贈与税を課税する方法です。一般的に「贈与」というと、こちらの方を指します。
 これに対して「相続時精算課税」とは、一定の要件に該当する場合に、一定の届出書と添付書類を提出することで、この方法を選択することを意思表示することによって適用できる制度です。一定の人からの贈与についてこの方法を選択した場合には、その人からの贈与については、その選択したあと一生「相続時精算課税」の方法により贈与税を計算することになります。そして、その人が亡くなった時にその贈与により取得した財産を相続財産に加算したうえで、その相続により納付すべき相続税から、それまでにこの贈与によって納付してきた贈与税を控除するというものです。
 簡単にいうと、財産を所有している人が亡くなる前に財産を相続させようという、相続の前倒しを可能にするような制度です。

【適用対象者】
 先に「一定の要件に該当する場合」と説明したように、この規定は「暦年課税」の贈与と違って誰でも選択できるというものではありません。
 まず、親子関係にある人たちの間でしか認められていません。そして財産をあげる人(贈与者)65歳以上の親で、財産をもらう人(受贈者)は20歳以上の子(その人が亡くなっている場合には、その亡くなっている人の子)でなければなりません。
 さらに、贈与者と受贈者の住所、氏名など一定の事項を記載した届出書を、その贈与税の申告期限(その贈与をした年の翌年2月1日〜3月15日まで)に納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

【贈与税額の計算】
 「相続時精算課税」については、贈与財産の価額から2,500万円の特別控除額を控除した残額に対して、20%の贈与税が課税されます。
 この場合において、贈与財産の価額から控除し切れなかった残額がある場合には、次の年以降に繰り越すことができ、その残額が0円になるまで控除することができます。

【相続税額の計算】
 「相続時精算課税」贈与を選択した贈与者(財産をあげた人)が亡くなった場合の相続税の計算については、まず相続税の課税価格の計算において「相続時精算課税」贈与により取得した財産の、その贈与時における価額を加算します。
 そして、その課税価格を基に前回までで見てきたような計算過程により相続税を計算し、その金額からこれまで「相続時精算課税贈与」により納付してきた贈与税額を控除して、その相続により納付しなければならない相続税を計算します。

 ここまで説明すると、わざわざこのような方法を選択して贈与税の申告をしても、相続で財産を取得した場合とあまり差はないじゃないかと思う方もいらっしゃるかと思います。しかし、場合によってはメリットがあるケースもあるので、次回説明します。
 ただ、この制度は1回選択すると撤回することができません。選択の際には充分な注意が必要です。 

ご質問・ご相談は

税務研修室のコーナーでは、皆様からのご質問・ご相談を募集しております。執筆者が個別にご回答いたします。
ご質問・ご相談はライフ田中鰍ワでお気軽にお寄せ下さい。

電 話 (7131)1359 FAX (7131)0040

 

『ほほえみだより2008年6月号に掲載』